第70章

葵の瞳に凄絶な光が宿り、キーボードを叩く指先が残像を描く。

「じゃあ、どっちが食い尽くすか勝負ね!」

彼女はファイアウォールを物理的に切り捨て、自ら零号機のコアプロトコルへ権限を明け渡した。

春が悲鳴を上げた。

「葵! そんなの自殺行為だ!」

「違うわ。これは釣りよ」

葵の声は氷のように冷たい。モニターには、無数のコードが滝のように狂った勢いで流れ落ちていく。

自身の心拍を囮にし、零号機が侵入したその一瞬の隙を突いて、Mシーケンスのロジック・ボムを逆流させて埋め込んだのだ。

ズドン――!

遠くの変電所から突如として爆音が轟き、ブラックアウトしていたY市の街明かりが、一瞬にし...

ログインして続きを読む